大人の予防歯科は子どもと何が違うのか|歯を失う原因から考える

カテゴリ:予防歯科 | 公開日:2026-08-20 | 最終更新日:2026-09-01 | 点検日:2026-10-01 | 監修:吉元 剛彦(医療法人 吉元睦男歯科医院 院長・歯科医師)

大人の予防歯科は子どもと何が違うのか|歯を失う原因から考える

歯みがきとフッ素で新しいむし歯を作らない——それは子どもの予防です。大人になると、守る対象そのものが変わります。全国の歯科医院で行われた抜歯を集計した調査では、永久歯を失う原因の第1位はむし歯ではなく歯周病でした。3位には「破折」、つまり歯が割れることが入っています。大人の予防歯科が何を予防するものなのか、順にご説明します。

この記事の要点

  • 永久歯の抜歯の主原因は歯周病37.1%・う蝕29.2%・破折17.8%(8020推進財団 2018年調査)
  • 歯周病と破折の割合は35歳以降、年齢とともに高くなります
  • 大人特有のむし歯リスクは根面う蝕・詰め物の境目・唾液の減少
  • 神経を取った歯は破折による抜歯が26.5%で、神経のある歯(13.1%)の約2倍です
  • 大人の予防には噛む力・飲み込む力を保つことも含まれます

大人が歯を失う原因

公益財団法人 8020推進財団は、全国の歯科医院で1週間のあいだに行われた抜歯の症例を集め、第2回 永久歯の抜歯原因調査(2018年)として報告しています。日本歯科医師会の会員から抽出した5,250人に調査票を送り、2,345人から回答を得たものです。

抜歯に至った主な原因割合
歯周病37.1%
う蝕(むし歯)29.2%
破折(歯が割れる)17.8%
その他7.6%
埋伏歯5.0%
矯正1.9%

むし歯より歯周病のほうが多く、3番目には「歯が割れて抜く」が入っています。この3つは、いずれも痛みが出る前から静かに進みます。

年齢によって原因が入れ替わります

同じ調査を年齢階級別に見ると、歯周病と破折の割合は35歳以降で年齢とともに高くなり、60歳以降ではほぼ一定でした。う蝕の割合は30歳以降で減り、80歳以降で再び増えています。

子どもの予防と大人の予防の違いは、ここにあります。子どもの予防は「新しいむし歯を作らない」ことが中心です。大人は、そこに歯周病と歯が割れることが加わり、35歳を過ぎるとその比重が年々大きくなります。

大人だけが抱えるむし歯のリスク

大人のむし歯は、子どものむし歯とできる場所が違います。

大人特有のリスク何が起きるか
根面う蝕(こんめんうしょく)歯ぐきが下がると、歯の根の面が口の中に出てきます。根の面はエナメル質に覆われていないため、歯の頭の部分より酸に弱く、むし歯が広がりやすい場所です
二次う蝕(詰め物の境目)詰め物・被せ物と歯の境目にすき間ができると、そこから内部で進みます。被せ物の下は見えにくく、気づいたときには広がっていることがあります
唾液の減少唾液には、汚れを洗い流す・酸を中和する・溶けかけた歯を修復する(再石灰化)働きがあります。加齢や服用中のお薬の影響で唾液が減ると、これらの働きが弱くなります

いずれも、子どもには基本的に起こりません。歯を治療した経験があること、歳を重ねたこと自体が、大人のリスク要因になります。お薬を飲んでいる方は、受診の際にお薬手帳をご持参ください。

神経を取った歯は割れて抜歯になりやすい

先ほどの調査では、抜いた歯の神経(歯髄)の状態も記録されています。

抜いた歯の状態割合
無髄(神経がない)・根の治療がしてある46.5%
有髄(神経がある)36.0%
無髄・根の治療がしていない16.2%

さらに、抜歯の主原因を神経の状態別に比べると、次のようになっていました。

抜歯の主原因神経のない歯神経のある歯
破折26.5%13.1%
う蝕33.0%22.4%
歯周病32.7%44.8%

神経を取った歯は、割れて抜歯に至る割合が神経のある歯の約2倍でした。神経を取った歯は水分を失ってもろくなり、また、神経がないため割れても痛みで気づきにくいという事情があります。

ここから、大人の予防には2つの意味が出てきます。ひとつは、神経を取らずに済ませること。むし歯を早い段階で見つけて、削る量を抑えることです。当院ではマイクロスコープ(肉眼の4〜25倍)を用い、拡大して確認しながら処置しています(マイクロスコープを使うと治療は何が変わるのか)。

もうひとつは、すでに神経を取った歯を守ること。根の治療をした歯は、被せ物の適合と噛み合わせを定期的に確認します。噛み合わせが一部の歯に強く当たっていると、割れる力が集中します(根管治療で歯を残せるかは何で決まるか)。

大人の予防で実際に行うこと

フッ化物配合歯磨剤は濃度と量を確認する

日本口腔衛生学会・日本小児歯科学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4学会は、2023年1月に、年齢別の使い方をまとめた推奨を公表しています。

年齢フッ化物濃度使用量
歯が生えてから2歳900〜1000ppmF米粒程度(1〜2mm)
3〜5歳900〜1000ppmFグリーンピース程度(5mm)
6歳〜成人・高齢者1400〜1500ppmF歯ブラシ全体(1.5〜2cm)

あわせて、就寝前を含めて1日2回みがくこと、みがいたあとは軽くはき出す程度にとどめ、うがいをする場合は少量の水で1回とすることが推奨されています。よくすすぐと、せっかくのフッ化物が流れてしまうためです。

※ 同推奨では、根面う蝕の予防が必要な成人について5000ppmFの歯磨剤のう蝕抑制効果が認められると述べられていますが、日本では市販されていません。店頭で選べるのは1500ppmFまでです。

歯と歯の間は歯ブラシでは届きません

歯ブラシの毛先は、歯と歯が接している面には入りません。ここはむし歯も歯周病も起こりやすい場所です。デンタルフロスや歯間ブラシを併せてお使いください。歯間ブラシはサイズが合っていないと歯ぐきを傷つけるため、太さは診察の際にご相談ください。

歯石の除去と、詰め物の点検

歯石はご自身では落とせません。また、詰め物・被せ物の境目や、外れかけていないかの確認は、症状が出る前に行う価値があります。

通う間隔は、お口の状態によって変わります。詳しくは 定期検診はどのくらいの頻度で行くべきか をご覧ください。歯ぐきの状態が気になる方は 歯周病の治療期間の目安 もあわせてご確認ください。

大人の予防にはもう一つ、機能の予防がある

ここまでは「歯を失わないための予防」でした。大人の予防歯科には、もうひとつ噛む力・飲み込む力を保つという側面があります。

これらは痛みを伴わず、自覚のないまま少しずつ低下します。食事でむせる、硬いものを避けるようになった、滑舌が気になる——気づくのは、かなり進んでからです。

当院では、この状態を7項目の検査で確かめます。判定には具体的な数値があり、動揺度3の歯と根だけの歯を除いた歯が20本未満であれば咬合力低下、最大舌圧が30kPa未満であれば低舌圧と判定します。7項目のうち3項目以上が該当すると口腔機能低下症と診断され、検査・管理とも保険が適用されます(2018年に保険収載された病名です)。

歯を守ることと、噛む・飲み込む機能を保つことは、別々の取り組みではありません。歯を失えば噛む力は落ち、噛まなくなればさらに機能は落ちます。詳しくは 口腔機能低下症の7項目検査 をご覧ください。

当院は鹿児島市吉野町にあり、鹿児島駅から車で約15分です。しばらく歯科を受診していない方も、まずは現在の状態を確認するところから始めていただけます。

※ 記載の期間・回数・費用は目安です。お口の状態や全身の状態により異なり、実際の治療方針は診察のうえ判断いたします。

よくあるご質問

大人の予防歯科は子どもの予防と何が違いますか?
子どもの予防は新しいむし歯を作らないことが中心ですが、大人はそこに歯周病と破折(歯が割れること)が加わります。8020推進財団の調査では、歯周病と破折の割合は35歳以降で年齢とともに高くなります。また、歯ぐきが下がって露出した根のむし歯、詰め物の境目からの再発、唾液の減少といった大人特有のリスクがあります。
大人が歯を失う一番の原因は何ですか?
8020推進財団の第2回永久歯の抜歯原因調査(2018年)では、抜歯の主原因は歯周病が37.1%で最も多く、次いでう蝕29.2%、破折17.8%でした。むし歯より歯周病のほうが多いという結果です。
大人はフッ素の濃度をいくつのものを選べばよいですか?
4学会合同の推奨(2023年1月)では、6歳以上の成人・高齢者は1400〜1500ppmFのフッ化物配合歯磨剤を歯ブラシ全体(1.5〜2cm)に付け、就寝前を含めて1日2回みがくこととされています。みがいたあとは軽くはき出す程度にとどめ、うがいをする場合は少量の水で1回とします。
神経を取った歯は抜歯になりやすいのですか?
同じ調査で抜歯の主原因を神経の状態別に比べると、破折が原因の抜歯は神経のない歯で26.5%、神経のある歯で13.1%でした。神経を取った歯はもろくなり、割れても痛みで気づきにくいためと考えられます。被せ物の適合と噛み合わせを定期的に確認することが予防につながります。

出典

※ 本記事の掲載内容は一般的な情報です。症状や適応には個人差があり、実際の治療方針は診察のうえ判断いたします。費用は2026-09-01時点の税込金額です。

※ 点検日(2026-10-01)は、記事の内容(制度・費用・リンクなど)に変更がないかを確認した最新の日付です。内容に実質的な変更があった場合は最終更新日を更新します。

医療法人 吉元睦男歯科医院について

しばらく受診されていない方も、まずは現在の状態の確認からご案内します。お薬を飲んでいる方はお薬手帳をご持参ください。

所在地
〒892-0871 鹿児島県鹿児島市吉野町3073-140
電話番号
099-244-1601
アクセス
鹿児島県鹿児島市吉野町3073-140/鹿児島駅から車で15分
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